GPTsは便利そうに見える。
編集者GPT、校正GPT、画像生成GPT、WordPress整形GPT、note用GPT。目的ごとに分ければ、毎回同じ説明をしなくて済む。最初は、自分専用のAI担当者が少しずつ育っていくようにも見える。
ただ、実際に使ってみると、そこは少し違った。
GPTsは、前回までを覚えて育つ相棒ではない。
OpenAI Help Centerでは、custom GPTsは現在メモリ非対応であり、過去セッションの文脈を保持しないと説明されている。ユーザー側で通常のChatGPTメモリをオンにしていても、custom GPTsの各interactionはステートレスで始まる。
つまり、GPTsに「前回の続きで」「前回決めた方針を踏まえて」と期待しすぎると苦しくなる。
では、GPTsに価値がないのかというと、そうではない。
GPTsの現時点での実感値としての価値は、記憶ではなく型の固定にある。毎回同じ役割、同じ初期条件、同じ出力フォーマット、同じ会話スターター、同じ目的の入口で始められることに意味がある。
この記事では、GPTsを「育つ相棒」ではなく「型化された入口」として考え直す。
GPTsは便利だが、育つ相棒ではなかった
GPTsは、特定の目的向けに設定したChatGPTである。
OpenAI Help Centerでは、GPTsはInstructions、Knowledge、Capabilities、Actionsなどを組み合わせて、目的に合ったChatGPTを作れるものとして説明されている。
Instructionsでは、役割、口調、目的、境界を設定できる。Knowledgeでは、参照資料をアップロードできる。Capabilitiesでは、画像生成やWeb検索などの機能を選べる。Actionsでは、外部APIと接続できる。
ここだけ見ると、GPTsはかなり強い。
ただし、重要な制約がある。custom GPTsはメモリ非対応であり、過去セッションの文脈を保持しない。各会話は基本的に新しく始まる。
そのため、GPTsは「前回までの内容を踏まえた長期プロジェクト管理」には向きにくい。
たとえば、記事シリーズで次のような使い方をしようとすると、だんだん重くなる。
- 前回の記事で決めた方針を覚えていてほしい
- 記事シリーズ全体の進捗を管理してほしい
- 前回やめた判断を次回も自動で引き継いでほしい
- 途中で変えた編集方針を覚え続けてほしい
こういう用途は、GPTsだけで抱えるより、ProjectsやCodex側のファイル管理に寄せた方がよい。
ここを誤解すると、GPTsに期待しすぎる。
GPTsを否定するものではない。ただし、記憶で育つ道具として見るより、毎回同じ型で始める道具として見た方が安定する。
GPTsで困ったこと
GPTsで困りやすいのは、前回までの方針を自動で引き継げないことだ。
たとえば、ブログ記事制作で「このシリーズでは第1弾で機能比較、第2弾でPersonalityとメモリ、第3弾でGPTs運用を扱う」と決めたとする。
通常のChatGPTやProjectsの文脈がある場所なら、その流れを会話の中で扱いやすい。しかしcustom GPTsでは、過去セッションの文脈を保持しない。次に開いたときは、基本的に新しい会話として始まる。
もちろん、Knowledgeに資料やルールを入れれば参照はできる。
しかし、Knowledgeは手動で追加・更新する必要がある。記事シリーズの進捗や最新判断を、毎回Knowledgeへ反映し続けるのは個人運営では重い。
固定資料には向いている。
- ブログの基本方針
- 文体ルール
- 固定のチェックリスト
- あまり変わらない仕様メモ
- 画像生成時の基本条件
一方で、更新頻度が高い情報には向きにくい。
- 記事シリーズの進捗
- 前回の判断変更
- 今回だけの編集方針
- 公開前の残タスク
- 実作業中に変わるメモ
こうした情報は、Projectsに置くか、Codexで管理しているファイルに残す方が扱いやすい。
Knowledgeは「固定資料」や「あまり変わらない前提」に向く。日々変わる運用状況や進捗管理を入れ続ける場所としては、少し重い。
ファイルを直す作業はCodexに寄せた方がよさそう
GPTsを編集者や校正役として使うことはできる。
ただ、記事ファイルを扱う作業では、Codexの方が運用に乗りやすい場面がある。
たとえば、誤字脱字、表記ゆれ、Markdown整形、WordPress用整形、一括修正のような作業である。
Codexはファイル単位で扱える。複数ファイルを読み、既存ナレッジとの整合を確認し、差分を見ながら修正できる。Markdownファイルとして記事を管理しているなら、修正前後の差分を確認しやすい。
これは、GPTsやChatGPTが不要という意味ではない。
方向性レビューや読者視点の違和感チェックは、GPTsやChatGPTにも価値がある。記事の主張が伝わるか、読者がどこで迷うか、タイトルと本文のズレがないかを見るなら、会話型のレビューは使いやすい。
ただし、ファイルを直す作業、整形する作業、複数箇所を一括で揃える作業は、Codexに寄せた方が安定する可能性がある。
| 作業 | 向いているもの |
|---|---|
| 誤字脱字、表記ゆれ、Markdown整形 | Codex |
| 記事の方向性レビュー | GPTs / ChatGPT |
| 読者視点の違和感チェック | GPTs / ChatGPT |
| LINEスタンプ画像生成の型化 | GPTs |
| 記事ファイルの修正・差分確認 | Codex |
ここも役割分担で考える。
GPTsはレビューの入口として使える。Codexはファイルを直す作業に向く。どちらか一方に寄せるより、作業の種類で分けた方がよい。
ではGPTsの価値はどこにあるのか
GPTsの価値は、記憶ではなく型化された入口にある。
毎回「あなたは○○です」と言わなくてよい。目的別の入口を作れる。出力フォーマットを固定しやすい。会話スターターを用意できる。初心者や未来の自分が、何を頼めばよいか迷いにくい。
たとえば、次のような作業には向いている。
- 画像生成の条件を毎回そろえる
- 特定用途のプロンプトを作る
- 決まった形式でレビューする
- 初心者向けに手順案内を始める
- 決まった会話スターターから作業を始める
GPTsは「成長して覚えてくれる担当者」ではなく、「毎回同じ初期条件で始められる入口」と見る。
この見方にすると、GPTsを増やす基準も変わる。
長期記憶が必要なものはGPTsに向かない。初期条件を固定したいもの、出力フォーマットを安定させたいもの、同じ目的で繰り返し始めたいものはGPTsに向く。

LINEスタンプ画像生成ではGPTsが効いた
IMEER LABでGPTsが効いた例として、LINEスタンプ画像生成がある。
画像生成では、毎回条件を書くのが地味に重い。
- LINEスタンプ向けの画像であること
- 370×320を意識すること
- 余白を確保すること
- 背景を扱いやすくすること
- 文字を入れるか、入れないか
- キャラクター設定を崩さないこと
- ロコ太などのキャラクター前提を踏まえること
通常のChatGPTで毎回説明してもよい。だが、毎回同じ初期条件を書くのは面倒である。
GPTsにしておくと、「LINEスタンプ用画像生成の入口」として始められる。最初から、LINEスタンプ向けの画像生成、キャラクター設定、背景、余白、サイズ、文字の扱いを固定しやすい。
ここで効いているのは、長期記憶ではない。
前回の作業を覚えてくれることではなく、毎回同じ型で始められることが効いている。画像生成プロンプトの型が安定し、相談の立ち上がりが速くなる。
もちろん、これも万能ではない。
キャラクターの一貫性、背景の扱い、文字の崩れ、審査前の確認は別途見る必要がある。GPTsにしたから自動で安定するわけではない。
ただ、LINEスタンプ画像生成のように、初期条件が毎回似ている作業では、GPTsの価値が出やすい。
Actionsには別軸の可能性がある
GPTsには、Actionsという仕組みもある。
OpenAI Help Centerでは、ActionsはGPTを外部APIへ接続する仕組みとして説明されている。設定には、接続したいサービスのAPI情報、認証情報、OpenAPI schemaが必要になる。
schemaでは、GPTがどのサーバーを呼び出せるか、どのエンドポイントを使えるか、どのパラメータを受け取るかを定義する。認証方式には、None、API key、OAuthなどがある。Public GPTsでActionsを使う場合、Privacy Policy URLが必要になる場合もある。ユーザーがAction実行を承認する場合もある。
Actionsは、単なる役割固定や型の固定とは別軸の価値である。
もし使いこなせれば、GPTsは会話の入口だけでなく、外部処理の入口にもなり得る。
IMEER LABの文脈では、たとえば次のような可能性がある。
- WordPressと接続して、記事情報を取得する
- Google Sheetsと接続して、管理表を参照する
- 独自DBと接続して、制作ログを扱う
- 自作の画像処理APIと接続する
- LINEスタンプ工房と連携する
- ライセンス管理APIと接続する
- e-Gov APIや法令検索APIと接続する
ただし、ここは現時点では評価保留である。
IMEER LABでは、Actionsを実運用として評価できていない。可能性は大きいが、実際に安定して使えるか、保守できるか、個人運営の負荷に見合うかは別問題である。
Actionsを入れると、API設計、認証、セキュリティ、エラー処理、保守、権限管理を考える必要がある。
個人運営では、「作れるか」だけでなく「保守できるか」を見る必要がある。Actionsは強い可能性を持つが、気軽に増やすものではない。
GPTsの機能・要素を整理する
GPTsには複数の構成要素がある。どれも便利だが、価値と注意点は違う。
| GPTsの機能・要素 | 価値 | 注意点 |
|---|---|---|
| Instructions | 役割・口調・判断観点を固定できる | 長期記憶ではない |
| Conversation starters | 使い始めの導線を作れる | 複雑な作業管理には弱い |
| Knowledge | 参照資料を持たせられる | 手動更新が必要 |
| Capabilities | 画像生成、Web検索などを使える | 目的に合わせて絞らないと散る |
| Actions | 外部APIと接続できる | API設計、認証、保守、権限管理が必要 |
GPTsを作るときは、この中のどれが必要なのかを先に見る。
単に「便利そうだからGPTsにする」のではなく、Instructionsを固定したいのか、Knowledgeを参照したいのか、Conversation startersで入口を作りたいのか、Actionsで外部APIとつなぎたいのかを分ける。
GPTsに向いているもの・向いていないもの
GPTsに向いているのは、型として残る作業である。
GPTsに向いているもの
| 向いているもの | 理由 |
|---|---|
| 画像生成の型化 | 毎回同じ条件から始められる |
| LINEスタンプ用プロンプト生成 | サイズ、背景、文字条件を固定できる |
| 目的別の相談入口 | 毎回役割説明をしなくてよい |
| 初心者向け手順案内 | 会話スターターと固定指示が効く |
| 定型出力が必要な作業 | フォーマットを固定しやすい |
| 外部API連携の入口 | Actionsで自作APIや外部サービスと接続できる可能性がある |
一方で、GPTsに向いていないものもある。
GPTsに向いていないもの
| 向いていないもの | 理由 |
|---|---|
| 長期プロジェクト管理 | 前回までの文脈を保持しない |
| 記事シリーズの進捗管理 | ProjectsやCodex側のファイル管理の方が向く |
| ナレッジを頻繁に更新する作業 | 手動更新が運用コストになる |
| ファイル単位の校正・整形 | Codexの方が向くことがある |
| 育つ編集者のような使い方 | メモリがないため自動では育たない |
| 権限管理が複雑な外部連携 | Actions設計・認証・保守の負荷が高くなる |
IMEER LABではどう使うか
IMEER LABでは、GPTsを長期記憶の場所として使わない。
使うなら、型として残るものに絞る。
| 用途 | 向いているもの | 理由 |
|---|---|---|
| LINEスタンプ画像生成 | GPTs | 初期条件と出力フォーマットを固定できる |
| 記事シリーズ管理 | Projects | 長期テーマの文脈をまとめられる |
| 記事ファイルの作成・校正・整形 | Codex | ファイル単位で扱え、差分確認しやすい |
| 企画の壁打ち | ChatGPT / GPTs | その場の相談や目的別入口として使える |
| 編集方針の保存 | カスタム指示 / ナレッジ / Projects | 全体方針やシリーズ文脈として持たせる |
| 外部API連携 | GPTs Actions / 独自API | 可能性は大きいが、まだ実運用評価は保留 |
LINEスタンプ画像生成GPTsは、残す価値がある。毎回の初期条件が似ていて、型として固定する意味があるためである。
一方で、校正やWordPress整形はCodexに寄せる可能性がある。記事ファイルを直接扱い、差分を確認できる方が、運用として安定しやすい。
記事シリーズ管理はProjectsに置く。前回までの方針、後続記事、内部リンク、残タスクのような文脈は、GPTsよりProjectsやファイル管理に向いている。
Actionsは大きな可能性がある。ただし、まだ実運用評価は保留である。LINEスタンプ工房やWordPress、自作APIとつながる可能性はあるが、保守と権限管理まで含めて判断したい。
まとめ
GPTsを作るかどうかは、「この作業は次回も同じ型で始めたいか」で判断する。
GPTsは、記憶で育つ道具ではない。
custom GPTsは現在メモリ非対応であり、過去セッションの文脈を保持しない。各会話は基本的に新しく始まる。そのため、長期プロジェクト管理や、記事シリーズの進捗管理をGPTsに任せると苦しくなる。
GPTsの価値は、「前回までを覚えること」ではなく「毎回同じ型で始められること」にある。
毎回同じ役割、同じ初期条件、同じ出力フォーマット、同じ会話スターター、同じ目的の入口で始めたい作業には向いている。LINEスタンプ画像生成のように、条件を固定して始めたい作業では価値が出やすい。
Actionsを使えば、GPTsは外部API連携の入口にもなり得る。
ただし、ActionsはまだIMEER LABでは実運用評価できていない。可能性は大きいが、API設計、認証、セキュリティ、保守、エラー処理、権限管理まで含めて判断する必要がある。
長期文脈はProjects。ファイル処理はCodex。型化された入口はGPTs。
GPTsは増やすより、型として残るものだけ作る。このくらいの距離感で使う方が、個人運営では続けやすい。
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